第7回 アマニフォーラムセミナーレポ―ト

若年層と子どもの栄養管理

子どものアレルギー対策を知る

最新の医療情報と正しい栄養情報の提供

アマニフォーラム実行委員会・日本製粉株式会社(後援:一般社団法人 日本アマニ(亜麻)教会)は、2018年11月6日(火) 日経カンファレンスルーム(東京都千代田区大手町)にて、「第7回アマニフォーラムセミナー~最新の医療情報と正しい栄養情報の提供~」を開催しました。同フォーラムは、年間4回のシリーズでの開催を予定しており、今回はその第7回目にあたります。

【フォーラムセミナーの開催趣旨】

団塊の世代が65 歳を超え、4 人に1 人が高齢者である「超高齢社会」の日本では、健康寿命の延伸を目指し、大変多くの方が健康に関心を持つようになりました。巷では健康に関する情報が溢れ、様々な健康食品が紹介されています。「この健康食品が身体に良い」と話題になる都度その情報に振り回されたり、流行りの商品の類似品が登場すると価格志向になり、安全安心が二の次になっていく場面が繰り返されています。偏った情報に右往左往し、何が正しいのかわからない状況は、生活者にとってメリットはありません。
アマニフォーラム実行委員会、日本製粉株式会社は、「生活者に優しい社会の実現」を目指し、健康寿命を延ばしてQOL(=生活の質)を上げることができるように、「食生活からの栄養改善」を提案し、健康な身体を維持することに貢献したいと考え、2017 年度よりアマニフォーラムセミナーを開催しております。
2018 年度のアマニフォーラムセミナーでは、「若年層、子どもの栄養管理」をテーマに、我々を取り巻く環境から子どもたちに与える影響、それに連動する「最新の医療情報と正しい栄養情報」を年4 回のセミナーを通して提供してまいります。

 

日本製粉株式会社 取締役専務執行役員 清水 弘和 氏のご挨拶

座長の齋藤康先生は、いままでの長年の研究の功績や社会への正確な情報の発信が認められ秋の叙勲受章のため本日は欠席ですが、とても嬉しいことです。

このアマニフォーラムセミナーは、お医者様や研究者の方、その立場から正確な最新の情報、そして管理栄養士の方から最新の栄養情報などをお話いただき皆様にお伝えし、また皆さんから多くの方に情報をお伝えしていただければと思っています。

昨年度は、高齢者の栄養管理をテーマに健康寿命をどのようにして具体的に延伸するかをお話して、皆さんに情報を発信していただきました。

今年度は、高齢化とともに深刻な問題である少子化に関して取り上げ、若年層や子どもの栄養管理をテーマとして、子どもたちを取り巻く環境を考え、その環境下にいる子どもたちの健やかな成長を願い、私たち大人が取り組まなければならない課題についてさまざまな新しい話題を提供し共に考えていきたいと思っています。

子どもたちの栄養管理といいながら、子どもたちの問題というのは私たち大人の問題を反映しているのが実情です。子どもたちの話をしながら、私たち大人の状況、環境を考えざるを得ないということがわかります。

健康状態を皆さんも意識されていると思いますが、私たちも自分の周りの環境に大きく左右されると思います。その環境に子どもたちも一緒に置かれているので、大人と同じように左右されてしまうのです。今回のアマニフォーラムでは、「子どものアレルギー対策を知る」をテーマに現代社会の課題でもある子どものアレルギーと子どもの食環境の関係について考えていただきました。

ご多忙の中、高増先生、國澤先生、多方面でご活躍の別所哲也さんにおいでいただき、様々な角度からこのテーマを浮き彫りにしたいと思っています。

今回ご登壇ならびに討論にご登壇いただいたのは、以下の方々です。

高増 哲也 氏
(地方独立行政法人 神奈川県立病院機構 神奈川県立こども医療センター アレルギー科 医長)

澤根 健人 氏
(日本製粉株式会社)

國澤 純 氏
( 国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所 ワクチンマテリアルプロジェクト 腸内環境システムプロジェクト プロジェクトリーダー)

別所 哲也  氏
(俳優・ラジオパーソナリティ)

【内容】

第1部では、子どものアレルギーと栄養面を医師として現場でサポートしている高増先生にご講演いただきました。

小児科医師として30 年近く子どもと共に過ごしてきた、高増先生は14 年前、当時の院長から栄養サポートチームの責任者に任命され、それからはアレルギーだけでなく、病気の子どもたちを栄養面で支える仕事も担ってこられました。

現在の日本は、超高齢者社会が到来し、さらにそれが進んでいます。高齢者に対する情報は世の中にあふれていますが、子どもの分野の情報はとても少ないのが現状です。しかし子どもの栄養を考えるようになって、高齢者社会であっても、いやそれだからこそ、子どもの栄養を大事にしないといけないことがわかってきました。

動脈硬化は若年からみられており、年齢が上がるにしたがって増加することが知られています。

小児期にメタボリック症候群がすでにある人は、成人期にメタボリック症候群、2 型糖尿病となっている率が非常に高いことも示されています。つまり生活習慣病の予防を考えると、成人になってからではなく、子どものうちからどういう環境で過ごすべきなのか、その環境の大きなひとつの柱が栄養状態なのです。

食物アレルギーの症状で最も多いのは蕁麻疹などの皮膚の症状なのですが、食物アレルギーと皮膚症状の関係について、最近考え方に変化が起きています。

アレルギーとは何なのか?アトピー性皮膚炎にはどう対処すれば良いのか?食物アレルギーの予防とこれまで思われていたことが間違いだったことなどについて、お話し下さいました。

 

第2部では、日本製粉株式会社の澤根氏に、アマニの基本的な情報や私たちの健康をサポートする機能性について、さらにアマニの活用方法についてお話いただきました。

 

アマニとはアマ( 亜麻) という植物の種子のことをアマニと呼びます。アマニは、
繊維用作物として栽培されていましたが、食用にも利用され、ローストしたアマニ粒や粉末の加工品、またアマニから絞った油が現在食用に利用されています。

2015 年12月に日本食品標準成分表7訂に「あまに油」「あまに いり」が追加されました。栄養管理等の指標に利用される日本食品標準成分表7 訂に掲載されたことにより、今後さまざまな方にご利用して頂くことができるのではないかと考えています。

アマニの3大栄養素は、オメガ3脂肪酸(α- リノレン酸)、食物繊維、リグナンです。オメガ3 脂肪酸などの脂肪酸は、エネルギー源・細胞膜成分・生理活性物質の原料として体の中で非常に大切な成分です。その中でもオメガ3 とオメガ6 と呼ばれる不飽和脂肪酸については、体内で作ることができないため食事からの摂取が不可欠な必須脂肪酸です。

日本では、魚を多く食べる人の多い魚業地域とそうではない農業地域を比較研究されています。虚血性心疾患や脳血管障害の患者数を比較してみたところ、漁業地域の数値が少ないという結果が出ています。漁業地域の方のオメガ3 摂取量が多いと言われており、この結果からも血管障害とオメガ3 の関係性が考えられるようになってきています。

アマニを毎日の食生活の中でどのようにどのくらい摂れば良いのか、アマニに含まれる食物繊維と人の健康機能の関係、アマニリグナンには、どのような健康効果があるのか?などを紹介しました。

アマニを使用したレシピは、日本製粉HP「ニップンのアマニ」内『アマニレシピ』(https://nippn-info. com/amani1/) でたくさんご紹介していますのでご利用ください。

 

第3部では、腸内細菌など腸内の環境と食物の関係や免疫、アレルギーに関する研究を行っている國澤純先生にご講演いただきました。

私たちの体の中の半分以上の免疫細胞がお腹に集中しています。免疫は、我々にとって自分のものではない異物が入ってきた時に排除するのが主な機能ですが、お腹の免疫はさらに腸内細菌や食品の栄養素など、我々ヒトとは違う異物でも有益なものに対しては免疫学的に抑制を働かせることによって、それを使えるようにするシステムも持っています。このように腸管では、多くの免疫細胞が協調的に働くことで、排除と共生という全く違う機能を制御しています。一方でこの巧みな免疫バランスが崩れてしまうと、食物アレルギーや炎症性腸疾患といった腸管の免疫疾患の発症に繋がります。さらにお腹の免疫は、お腹局所だけでなく花粉症やアトピー性皮膚炎といったお腹以外の組織の免疫に影響を与えていることが分かっています。さらには糖尿病などの生活習慣病など免疫とは関係のないと思われていた疾患にもお腹の免疫が関わっていることが分かってきており、腸活という言葉があるように、「お腹の中から健康」ということが注目されています。

マウスを飼育する餌の油を、大豆油からアマニ油に変えると全く下痢をしなくなりました。アマニ油で飼育したマウスのお腹の油はどのようになっているかを調べると、マウスの腸管にはアマニ油に豊富に含まれるα- リノレン酸が入っていました。

我々が作ることの出来ないオメガ3 脂肪酸やオメガ6 脂肪酸という必須脂肪酸は、食べた油にどれだけ入っているかが我々のお腹の脂肪酸組成を直接決めていることやそこからできる代謝物にも影響していることわかりました。

オメガ3 脂肪酸は、体内で作ることができないので外から摂らなければなりませんが、調査の結果、全性別・全世代で不足している状態です。

オメガ3脂肪酸を含む様々な食材の紹介や日本各地の方々の生活習慣や腸内環境についての調査、便に関する研究、ヤセ菌・デブ菌についてなど、興味深い内容をお話しいただきました。

 

対 談 「この歳になってわかること~僕と家族の健康~」

「この歳になってわかること-僕と家族の健康-」について、別所哲也さんがいままで経験されてきたことから疑問に思うことをテーマに高増先生・國澤先生と対談しました。

別所さんから、小学生の娘さんを取り巻く環境から「子どものアレルギー予防について」、中学生の頃から別所さんに症状がある「花粉症でいちばんのおすすめは? 」アメリカでの生活経験から「アメリカは日本より食物アレルギーの種類が多く、患っている人が多いのはなぜ?」人間ドックの検査で聞いた「遅延型アレルギーって何?」ほか、「母親の食の好みは胎児に遺伝する?」についての質問に先生方にお答えいただきました。

また、会場の皆さんからの質問、「高増先生の講演で離乳食を食べる時期についての話があり、また除去するのではなく食べて慣れさせるということをおっしゃっていましたが、実際アレルギーを起こすと避けてしまいがちです。どのように摂取していけば良いでしょうか? 医師に相談しながらが良いのでしょうか」、國澤先生の調査研究について「腸内細菌のデータ測定の被験はどこで希望ができるのでしょうか?」、ほか、「親に食物アレルギーがある場合、やはり子どもに食べさせても大丈夫か心配です。こういう場合はどうしたら良いでしょう」、「アマニ油の賞味期限が切れたものは食べても大丈夫ですか?」の質問にお答えいただきました。

 

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