第8回 アマニフォーラムセミナーレポ―ト

若年層と子どもの栄養管理

子どもの脳と心の発育 脂質との関係

最新の医療情報と正しい栄養情報の提供

アマニフォーラム実行委員会・日本製粉株式会社(後援:一般社団法人 日本アマニ(亜麻)教会)は、2019年1月24日(木) 御茶ノ水ソラシティ カンファレンスセンターにて、「第8回アマニフォーラムセミナー ~最新の医療情報と正しい栄養情報の提供~」を開催しました。今回はその第8回目にあたります。

【フォーラムセミナーの開催趣旨】

団塊の世代が65 歳を超え、4人に1人が65 歳以上の高齢者である「超高齢社会」の日本では、健康寿命の延伸を目指し、大変多くの方が健康に関心を持つようになりました。巷では健康に関する情報が溢れ、様々な健康食品が紹介されています。「この健康食品が身体に良い」と話題に上る都度その情報に振り回されたり、流行りの商品の類似品が登場すると価格志向になり、安全安心が二の次になっていく場面が繰り返されています。偏った情報に右往左往し、何が正しいのかわからない状況は、生活者にとってメリットはありません。
私どもアマニフォーラム実行委員会、日本製粉株式会社は、「生活者にやさしい社会の実現」を目指し、健康寿命を伸ばしてQOL(=生活の質)を上げていかれるように、「最新の医療情報と正しい栄養情報」を生活者に伝えてサポートしていきたいと考え、2017 年に「からだのケアフォーラム」を立ち上げ、それを推進する「アマニフォーラム」セミナーを開催しております。

2017 年度「アマニフォーラム」セミナーでは、「高齢者の栄養管理」をテーマにサルコペニアやフレイル、それに伴う栄養管理情報、また、地域包括ケアシステムの具現化と高齢者の生きがい就労の創生に向けた産官学連携の活動など、年4回のセミナーを通してお伝えして参りました。今年度の「アマニフォーラム」セミナーでは、「若年層、子どもの栄養管理」をテーマに、少子高齢社会の子どもたちが健やかに成長し、日本の将来を担い活性化していってもらうために、我々を取り巻く環境から子どもたちに与える影響、それに連動する最新の医療情報や栄養情報を、年4回のセミナーでお伝えし共有して参りたいと思います。セミナーに参加されるマスコミや医療、福祉関係者の皆様には、正しい情報を生活者にお伝えいただきたく、また、賛同してくださる企業の皆様には、「最新の医療情報や正しい栄養情報」を基に、生活者が安心して暮らせる「場の提供」を一緒にお取り組みいただき、皆で「生活者にやさしい社会」を実現していきたいと考えております。何卒宜しくお願い申しあげます。

 

日本製粉株式会社 取締役専務執行役員 清水 弘和 氏のご挨拶

本セミナーは、千葉大学元学長で名誉教授でもある齋藤康先生を座長に迎えて毎回お医者様や研究者、管理栄養士の方の立場から正確で最新の医療情報、研究成果と正しい栄養情報を提供しています。

 アマニフォーラムは、昨年度は高年齢者の栄養管理をテーマに健康寿命をどのように具体的に延伸していくかについて話し合いました。 今年度は、高齢化とともに深刻な問題である少子化を取り上げ若年層や子どもの栄養管理を連続したテーマとして今まで話し合ってきました。子どもたちをとりまく環境を考えて健やかな成長を願い、我々大人が取り組まなければいけない課題についてさまざまな新しい話題を提供し、共に考えていきたいと思っています。子どもたちの栄養管理といいながら、子どもたちの問題は私たち大人の問題を反映しています。すなわち子どもたちの話をしながら私たち大人の状況や環境を考えざるを得ないということです。健康状態は、我々大人でさえ自分たちの意識だけではなく周りの環境や状況の影響を大きく受けています。今回のアマニフォーラムでは「子どもの脳と心の発育 脂質との関係」をテーマにいろいろと考えていきたいと思います。

ご多忙のなか西船内科院長である篠宮先生、理化学研究所 脳神経科学研究センターの吉川先生そしてプロゴルファーとして多方面でご活躍の東尾理子さんにおいでいただき、さまざまな角度からこのテーマを浮き彫りにしていきたいと思っています。

今回ご登壇ならびに討論にご登壇いただいたのは、以下の方々です。

篠宮 正樹 氏
(医療法人社団 西船内科 院長)

吉川 武男 氏
(理化学研究所 脳神経科学研究センター 分子精神遺伝研究チーム チームリーダー)

澤根 健人 氏
(日本製粉株式会社 イノベーションセンター)

東尾 理子 氏
(プロゴルファー)

【内容】

第1部では、生きていることの不思議さ素晴らしさ、時代とともに変化する子どもの生活環境や自尊感情を持ち習慣づけることの大切さなどについて、篠宮先生ににご講演いただきました。

私が子どもの頃は夜中に開いている店はなく、簡単に移動できる車社会ではありませんでした。昔と比べて現在は環境が違っています。
「家や学校でストレスを感じる」や「生活がつまらない」と答える日本の中学生はスウェーデンの2から3倍あります。逆に「私は幸せである」、「家族は私の努力をわかってくれている」については「はい」と答える中学生は、スウェーデンの半分です(大阪医大・田中英高先生)。これは、自分を大切に思えないこと、即ち自尊感情が低いことだと考えました。自分を大切に思えなければ、病気を予防しようと思いません。このような子ども達が少なからずいるのです。
そこで私は、子ども達に「生きていることの不思議さと素晴らしさ」を説いています。
肥満の中でも、内臓脂肪の蓄積が様々な悪影響をもたらします。
我々は遺伝子で身体がつくられ支配されています。遺伝子はもちろん変わらないのですが、食事や生活習慣などの環境因子で遺伝子発現が修飾されて、体質を変化させることがわかってきました。これをエピジェネティックな変化といいます。昔から「Habit is a second nature.習慣は第二の天性」と言われています。

成人肥満と小児肥満の地区別頻度の1992年までの調査の結果、成人肥満が多い地区で小児肥満も多いなどの1992年までの調査の結果や、自尊感情を高めることの重要性についてお話しいただきました。

 

 

 

 

 

第2部では、理化学研究所 脳神経科学研究センター 分子精神遺伝研究チームチームリーダーの吉川氏に、脳の発育と精神に脂質が与える影響についてご講演いただきました。

脳は、乾燥重量の60%が脂質です。その脂肪酸組成のうち15%がドコサヘキサエン酸(DHA)、10%がアラキドン酸です。どちらも必須脂肪酸です。
脂質は特に細胞膜に多く、細胞の内と外の環境を隔てています。なぜ脳に脂質が多いかというと、脳には神経細胞とその配線が多く存在し、その配線を絶縁している髄鞘(ミエリン)が主に脂質でできているからです。そのために脳には脂質が多くなっています。
思春期以降に発症する病気として統合失調症と気分障害があり、気分障害にはうつ病と躁うつ病があります。小児期から発症する病気は、自閉症を含む発達障害が主になっています。

統合失調症の症状としては幻覚や妄想、思路の障害があります。約100 人に1 人が発症していると言われており、珍しい病気ではありません。遺伝、環境などさまざまな要因があり、決して単純な疾患ではありません。統合失調症には遺伝的要因が関与していますが、一方で環境的な影響もあり、そのほとんどが脳の発達期における侵襲です。たとえば、母親が妊娠中に飢饉に遭遇して生まれて来た子どもは、そうでない子どもに比べて約2倍統合失調症を発症しやすいという疫学的なデータがあります。

統合失調症リスクと脂肪酸の関係、脳の形態、前頭葉で発現変化が認められた遺伝子群、母乳による行動への影響などマウス実験からわかってきた事をお話しました。

 

 

 

第3部では、オメガ3脂肪酸だけでなく、リグナン・食物繊維など豊富に健康素材を含むアマニについて、日本製粉の澤根氏にお話しいただきました。

アマという植物の種子のことをアマニと言います。アマは、麻布を作るために育てていましたが、現在では食用にも使われています。食用では、炒ってそのまま食べるローストアマニやそれを加工したもの、アマニから油を搾ったアマニ油も食用として利用されています。

日本製粉では、2003年からアマニの取り扱いを始めています。2014年にテレビ番組で取り上げられたことをきっかけに認知度が高まり、それに伴い市場も広がってきました。現在ではアマニ油に加えて、アマニ油を配合したマヨネーズやドレッシング、さらにはロースト粉末やロースト粒の販売を進めてきています。
アマニに関する認知度は2017 年は前年度に比べて2倍に近く上昇しており、その中でも40代以上の女性に非常に高い関心をいただいています。
また、今後使用してみたい健康機能性成分についてのアンケート結果からも、アマニ油(α- リノレン酸) やオメガ3脂肪酸に高い関心が集まっていることが分かります。

2015年12月に日本食品標準成分表7訂に「あまに油」「あまに いり」が追加されました。この食品標準成分表は栄養管理の基準にも用いられており、学校給食など栄養管理が必要な分野での使用が期待され、さらなる市場の拡大が期待されます。

アマニに含まれるオメガ3脂肪酸の代謝と健康効果、アマニに含まれる食物繊維と人の健康機能の関係、アマニリグナンの健康効果、アマニを毎日の食生活の中でどのようにどのくらい摂れば良いのかなどを紹介しました。

 

 

 

対 談 「食生活で子供の発育をサポート・家族の栄養管理」

「食生活で子どもの発育サポート」~理子さん流 ご家族の栄養管理とは~について、プロゴルファーの東尾理子さんが、篠宮先生、吉川先生と対談しました。

東尾さんから、「油の摂取が子どもの脳や体の成長に与える影響について」、「子どものメンタルを整え、情緒を安静させる食事」、「子どもの脳が完成するまでの間にすべきことは」「最近の子どもたちの栄養について」についての質問に先生方にお答えいただきました。

また、会場の皆さんから「早寝早起き朝ごはんと自尊感情の相関は理解しました。生活習慣の良い親はもともと自尊感情が高いから子どももそうなるのではないでしょうか。」「発達期の脳の話でしたが大人になってからオメガ3を摂取しても脳の発達には大切でしょうか。またエストロゲンの減る更年期以降の女性ではα-リノレン酸を摂ってもあまり健康効果はないのでしょうか?」の質問にお答えいただきました。

 

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