第9回 アマニフォーラムセミナーレポ―ト

最新の医療情報と正しい栄養情報の提供

環境教育を含めた予防医学

アマニフォーラム実行委員会・日本製粉株式会社(後援:一般社団法人 日本アマニ(亜麻)協会)は、2019年7月10日(水) JA共済ビル カンファレンスホール(永田町)にて、「第9回アマニフォーラムセミナー ~最新の医療情報と正しい栄養情報の提供~ ―環境教育を含めた予防医学―」を開催しました。

【フォーラムセミナーの開催趣旨】

団塊の世代が65歳を超え、4人に1人が65歳以上の高齢者である「超高齢社会」の日本では、健康寿命の延伸を目指し、大変多くの方が健康に関心を持つようになりました。
巷では健康に関する情報が溢れ、様々な健康食品が紹介されています。
「この健康食品が身体に良い」と話題に上る都度その情報に振り回されたり、流行の商品の類似品が登場すると価格志向になり、安全安心が二の次になっていく場面が繰り返されています。偏った情報に右往左往し、何が正しいのかわからない状況は、生活者にとってメリットはありません。
私どもアマニフォーラム実行委員会、日本製粉株式会社は「生活者にやさしい社会の実現」を目指し、健康寿命を延ばしてQOL(=生活の質)を上げていかれるように、「最新の医療情報と正しい栄養情報」を生活者に伝えてサポートしていきたいと考え、2017年に「からだのケアフォーラム」を立ち上げ、それを推進する「アマニフォーラム」セミナーを開催しております。
2017年度「アマニフォーラム」セミナーでは、「高齢者の栄養管理」をテーマにサルコペニアやフレイル、それに伴う栄養管理情報、また地域包括ケアシステムの具現化と高齢者の生きがい就労の創生に向けた産学官連携の活動などについて、年4回のセミナーでお伝え致しました。
2018年度は、「若年層、子どもの栄養管理」をテーマに、社会環境的な問題の一つである貧困が子どもに与える影響や子どもの生活習慣病について、また、子どものアレルギー対策、子どもの脳と心の発育と脂質との関係についてなど、年4回お伝えして参りました。
今年度のアマニフォーラムセミナーは「予防医療」をテーマにし、我々を取り巻く環境が母体や子どもたちに与える影響について、また、最新のエビデンスに基づいた栄養情報をお伝えします。私どもは少子高齢社会の子どもたちが健やかに成長し、日本の将来を担い活性化していってもらうことを願い、今年度も取り組んで参ります。
セミナーに参加されるマスコミや医療、福祉関係者の皆様には、最新の正しい情報を生活者にお伝えいただきたく、また、賛同してくださる企業の皆様には、「最新の医療情報や正しい栄養情報」を基に、生活者が安心して暮らせる「場の提供」を一緒にお取り組みいただき、皆で「生活者にやさしい社会」を実現していきたいと考えております。何卒宜しくお願い申し上げます。

 

日本製粉株式会社 常勤顧問 清水 弘和 氏のご挨拶

アマニフォーラムは、3年目を迎えました。2017年度は、高齢者の栄養管理をテーマに健康寿命をどのように具体的に延伸していくかについて話し合いました。
昨年2018年度は若年層や子どもの栄養管理をテーマにして社会をとりまく環境、子どもたちをとりまく環境が与える影響や子どもの生活習慣について話し合い、子どもの発育と脂質の関係について話し合ってきました。

そして今年度のアマニフォーラムセミナーは、通年のテーマとして予防医療をテーマにして、我々をとりまく環境、たとえば妊娠時の母体やその子どもに与える影響について話し、最新のエビデンスに基づいた研究や栄養情報などをお伝えしていく予定です。これらの問題提起も含めて私たちは子どもたちが健やかに成長していくためには、今の社会環境にどう対応していくべきか、何を我々が取り組まなければいけないのかを話し合いさまざまな視点で共に考えていきたく思っています。
今回は、環境教育を含めた予防医学をテーマにいろいろと考えるかたちにしたいと思っています。

みなさま、お気付きのように世の中にはさまざまな情報が流れています。今までの新聞やテレビなどに加えてネットからのあふれる情報があります。発信元が法人などの会社から、今では個人も同等の発信元になっていると認識されるようになりました。さらに情報の発信源が不明なものも多くなり真偽のほどが不明な情報も差別なく一様に流れる時代になっています。健康食品に関しても同様です。まさに玉石混淆の状態であらゆるレベルの情報があふれています。きちんと人の試験をしてエビデンスを示している商品もありますが試験結果もなく雰囲気だけで健康に良いとするような商品もあり、我々には見聞きしているだけでは、一体何を信じ何を根拠に判断して良いのかまったくわからない状態になる方も多いのではないでしょうか。そこで私たちは毎回お医者様や研究者、栄養専門家の方々からそれぞれの分野の正しい科学的情報を提供していただき、それをみなさまにお伝えし、さらには消費者や生活者の方にお伝えしていただき、賢い選択をするお手伝いをしていきたいと思っています。

今回ご登壇ならびに討論にご登壇いただいたのは、以下の方々です。

森 千里 氏
(千葉大学大学院教授 千葉大学 予防医学センター長 エコチル調査千葉ユニットセンター長)

榎戸 教子 氏
(キャスター)

澤根 健人 氏
(日本製粉株式会社 イノベーションセンター)

【内容】

第1部では、明治の文豪・森鷗外(1862~1922)のひ孫で、千葉大学大学院教授 千葉大予防医学センター長の森千里 先生ににご講演いただきました。

「予防医学からみる栄養と健康 : 鷗外の時代から現代まで」と題して、環境要因が健康に与える影響に対する医学的対応について、お話いただきました。

健康寿命の延伸が求められる中、健康を保持するためには、本人の「素因」×「環境」×「生活習慣」がポイントになります。
私の曾祖父森鷗外は十九歳で今の東京大学医学部を卒業する前から父親の静男が東京の千住に開いていた医院の手伝いをしていました。卒業時の進路を考える際、「治療も大事だが予防をして病気にならないようにするのがもっと大事なのだ」と考え、「予防医学を研究したい」と思っていました。しかし明治になって間もなかった当時、ヨーロッパでも、「予防する」という言葉はありましたが、「予防医学」という学問分野はまだありませんでした。
医学の歴史を振り返ると、20世紀は早期発見・早期治療の時代と言われ、21世紀になってようやく「予防医学の時代」と言われるようになってきました。つまり、鷗外は根本的な健康増進のあり方、「予防に勝る治療無し」を100年前に見通していたのです。

健康の状態は、自分がそもそも持っている遺伝的背景、「素因(内因)」とまわりの「環境」と「生活習慣」の3要素が複雑にからみあって決まっていきます。健康が保たれない場合は、3要素いずれかになんらかの「足りないところ」があるのです。遺伝的背景を変えることはできませんが、自分がそういう背景を持っている、ということを知ることが健康を向上させる第一歩です。予防医学では、どんな事が大事かというと、まず現状を知り、次にその健康に関心を持ち、そして行動に移す、ということです。

20世紀の医療は、原因を見つけることと、治療方法の確立そして早期発見、早期治療が中心でした。21世紀の医療は「予防医学」が中心的位置を占めると言われています。
予防医学、予防医療というのは、その疾患に対するリスクが高い集団(ハイ・リスクグループ)を見つけ、その集団の疾病の発生を未然に防ぐにはどうしたらよいかを研究する学問です。
予防医学には「第1次予防=健康増進」、「第2次予防=早期発見、早期治療」、「第3次予防=再発防止およびリハビリテーション」の三段階があると言われますが、現在は「第1次予防」の前に「0次予防」があると考えられています。第1次から第3次までは個人の努力で行うものですが、「0次」とは、個人の努力ではできないことを社会として行っていく「環境改善型の予防医学」の段階のことです。

 

 

 

第2部では、BSテレ東の『日経プラス10』でキャスターを務める榎戸教子氏に20年のアナウンサー人生を通じて感じた健康とコミュニケーションについてご講演いただきました。

アナウンサーをこれまで20年続けてきたので、コミュニケーションのプロと言わせていただいても良いのではないかと思っています。また私自身この20年間、健康を害して仕事を休んだり、番組に穴を開けた事がありません。私自身の20年間を一緒に振り返りながら私自身がどのように自分のからだや心とコミュニケーションをしてきたのか、みなさんのヒントになるようにお伝えできればと思います。

健康とは、からだだけではなくて、心そして職場でのコミュニケーションが健康である状態が私たちの一日の生活、人生の健康な状態であるのではないかと思っています。
私は、今年4月から「NIKKEIプラス10」という番組を担当しているので、仕事によって自分自身のスケジュールが変わってきます。今1歳2ヵ月の子供がいて、保育園に送り迎えをする時間があります。食事をさせたり準備をしたり家事をし、保育園へ送りその後、私の仕事の1日が始まります。

食事については、いろいろなものを摂るように心がけています。ご飯とお味噌汁は基本で、焼き魚や煮物、アマニをかけた野菜などです。作り置きもしています。日々の生活では出来ることをやり、できないことはやらない、そのように日々の生活を成り立たせています。

20年間アナウンサーの仕事を休まずにできていたのは、自分自身のからだとのコミュニケーション、自分がどういう状況だと太りやすいのか、どういう状況だとからだを壊しやすいのか、風邪をひきやすいのかということを把握し、それに対処をしてきたからこそ仕事に穴をあけずにやってこられたのではないかと思っています。どうやって環境の中で気持ちよく過ごせるのか、例えば「寝る」ということは私自身にとってエネルギーを蓄える時間でとても大事ですが、出張で自宅で眠れない時は、好きな香りや音楽を持って出かけるなどして、自分自身の環境作りにこだわっています。からだとのコミュニケーション、心とのコミュニケーション、そして職場環境とのコミュニケーションを大事に過ごしています。

ほか仕事年表に、榎戸さんの体重グラフを重ねたり、印象に残る自己紹介の仕方、相手にとって心地よいコミュニケーションとは、聞き手として、表情と笑顔など、日常やビジネスのシーンでも役に立つお話をしてくださいました。

 

第3部では、オメガ3脂肪酸だけでなく、リグナン・食物繊維などを豊富に含む「アマニ」について、日本製粉の澤根氏にお話しいただきました。

アマニは、アマと呼ばれる作物の種子のことです。アマは、もともと布の繊維などに使われていましたが、その種子であるアマニに関しては、そのまま煎って食べられているほか、アマ二から搾った油であるアマニ油が食用として利用されています。

特に2014年と昨年2018年にテレビ等で露出の機会が増えたこともあり、日本国内で市場が拡大されて来ています。その中でもアマニ油の売り上げ多くを占めており、また、アマニ油を使ったマヨネーズやドレッシングも多く販売されています。

2019年4月度の調査では、調査対象者のうち51%の方がアマニ油知っていると回答しており、その中でも40代以上の女性の方では認知度が6割を超えていました。アマニを認知している51%の方の中で、購入したことがある方やこれから購入してみたいと答えた方が合わせて約75%にも上り、アマニに関してポジティブな印象を持っていることがわかります。
このような認知度の拡大を受け、2015年12月に、「あまに油」と「あまに いり」 が食品成分表7訂に採用されました。食品成分表は栄養管理の指標に利用されているので、学校給食や病院食といった栄養管理の必要な場面においても、アマニが積極的に活用されていくことが現在期待されています。

素晴らしい栄養素であるオメガ3脂肪酸その代謝と健康効果、食物繊維を豊富に含むことによる健康効果の解説。
アマニに含まれるリグナンはSDGという略称で呼ばれ、他の植物と比べてもアマニには特に豊富に含まれ、日本製粉の研究成果から、リグナンの摂取によりさまざまな健康効果が得られること、摂取の方法などをお話いただきました。

 

第4部トークセッション 予防医学と栄養について

「予防医学と栄養について」森千里先生・榎戸教子氏・澤根健人氏でトークセッションを行いました。

榎戸氏:「森先生のお話で溜まったものをきちんと出していくことが大事だとおっしゃっていましたが、その出し方について改めてポイントを教えてください。」

森先生:「からだの中の化学物質、特にPCB やダイオキシンなど脂肪に溶けるものは、筋肉や脂肪、肝臓の中に溜まっています。これらの有害な化学物質は、血液の中も循環しています。その血液の中から化学物質を減らすためには食物繊維が重要な役割を果たします。肝臓から出る胆汁には体内のPCB やダイオキシンなどの化学物質も含まれています。食物繊維は、胆汁とともに中に含まれる化学物質も一緒に捕まえて便とともに体外に排出します。」

榎戸氏:「まさにアマニにはたくさん含まれています。食物繊維でもバランスが大事だとお聞きしたことがあるのですが、アマニに関してはどうでしょうか。」

澤根氏:「食物繊維は一般的に不溶性と水溶性の2 つに大きく分けられています。アマニはその両方をバランスよく含んでいます。」

榎戸氏:「日本人は世界の中でも魚を摂るような文化があり、その中で化学物質を排除するというのは難しいのですが、バランス良く、例えばマグロなどに関しては、そればかりではなく他の魚も食べるべきということですか。」

森先生:「魚にもたくさんの種類があります。大型で寿命の長い魚は、その逆の魚よりも汚染濃度が高いので、子供にはなるべく小さい魚を食べさせてほしいと思います。」

澤根氏:「魚、特にEPA やDHA と言われている脂肪酸は、魚から摂取するのは非常に貴重だと言われています。今回ご紹介したアマニがその代替になる可能性があります。アマ二にはα- リノレン酸というオメガ3 脂肪酸があるのですがこれを魚の代わりとして積極的に使ってもらうことが一つの方法かと思います。」

ほか、様々な質問について時間いっぱいまでお話しくださいました。

 

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