第4回 アマニフォーラムセミナーレポ―ト
超高齢化社会の中で健康寿命を延ばし、QOL(生活の質)を向上させる方法とは
アマニフォーラム実行委員会(後援:一般社団法人日本アマニ協会/協賛:日本製粉)は2018年2月6日(火) お茶の水ソラシティ カンファレンスセンター(東京都千代田区)にて、「第4回アマニフォーラムセミナー~医療の最新情報と正しい栄養情報の提供~」を開催しました。同フォーラムは、全4回のシリーズでの開催を予定しており、今回はその第4回目にあたります。
【フォーラムセミナーの開催趣旨】
団塊世代が65 歳を超え4 人に1 人が高齢者となった日本では、健康への関心が非常に高くなっています。巷では健康に関する情報が飛び交い、さまざまな健康食品が紹介されている一方、価格競争に拍車がかかり結果的に味や品質などが保証できない商品が出回り、生活者にとってメリットが少ないばかりか何が正しいのかさえわからない状況が繰り返されています。
アマニフォーラム実行委員会は生活者に優しい社会の実現を目指し、健康寿命を延ばしQOL(生活の質)を向上すべく、正しい知識や情報を生活者に伝えるサポートをしたいと考えアマニフォーラムセミナーを開催することにいたしました。全4 回のセミナーを通し、企業の取り組みや医療現場の栄養情報の提供のあり方、そして予防医学にも役立つ安全安心な食品など、エビデンスに基づいた正しい情報を提供してまいります。
今回のプログラムは三部で構成され、千葉大学 名誉教授・アマニフォーラム実行委員会 座長 齋藤 康 氏のご挨拶から始まりました。
アマニは栄養分の中でも脂肪の成分が多く含まれている食品です。脂肪といえばまず太るということが連想されるかと思いますが、実は、未知の領域を含めてさまざまな働きをしている大変重要な栄養分です。
脂肪が体内に吸収されてから、その機能を発揮させるまでの流れは非常に複雑です。エネルギーの保存として脂肪組織に入っていくだけではなく、あらゆる臓器に分布しながらいろいろな形で機能性成分として働いており、単純に食べたものが体を太らせているというようなことではありません。単独で働く場合もあれば、生体が持っているさまざまな物質と結合したり、一緒になったりして初めて多彩な機能を発現させることもあるということがわかっています。
アマニフォーラムセミナーでは、健康を維持する上で脂質やその他の栄養成分が持つ意味についての話題が登場します。ですから、この機能性は果たしてどのような過程を経て発現しているのかということにも考えを及ばせながら聴講していただくと、一層興味深いセミナーとしてより有益なものになるのではないかと思っています。
今回ご登壇ならびに討論にご登壇いただいたのは、以下の方々です。
飯島 勝矢 氏 (東京大学 高齢社会総合研究機構 教授)
石川 祐一 氏 (公益社団法人 日本栄養士会 常任理事)
川口 康平 氏 (日本製粉株式会社)
【内容】
第1部では内閣府の一億総活躍国民会議で有識者民間議員を務める飯島氏に、自らが主導するフレイル予防の取り組みについてご講演いただきました。
フレイル対策の中でもとりわけ食べる力を維持していくことが不可欠であること、そのためにオーラルフレイルの早期発見が重要であることなどについて具体的な事例を交えてお話いただきました。
今後、より効果的なフレイル予防を達成するためには、フレイルの多面性を考慮し、一人ひとりにとっての効果的な対策は一体何なのかを本人に気づかせるとともに、継続性を生ませるために市民の意識変容を起こす必要があります。そのためにフレイルチェックでは、高齢者同士がお互いチェックし、自分ごととして認識しやすい仕組みを整備しています。さらにチェック項目は食、口腔、社会性、運度の4つのカテゴリーに分かれており、そこに自分でシールを貼ることで、自分にとってリスクがある部分を早期に気づかせるということにも役立てられるようになっています。
こうした取り組みは、それぞれの地域に根付き、最終的には次の世代へ引き継がれることになって初めて意味のあるものになるものです。フレイル予防を達成させるためには、市民の意識変容と自治体側の受け皿整備の二つが連動した形で機能させていくことが必要不可欠です。改めて「総合知」による街づくりという視点で取り組みを進めていくべきだと感じています。
第2部では臨床の最前線で栄養指導に取り組まれている 公益社団法人 日本栄養士会 常任理事 石川 祐一 氏に、超高齢化社会を迎えようとしている中、これからの栄養管理には何が求められているのかについてご講演いただきました。また、これからの栄養士に求められる「栄養をつなぐ」という視点の重要性についてお話いただきました。
今回、平成30年度の診療報酬改訂でも栄養が重要なキーワードに設定されています。地域包括ケアシステムの取り組みを強化する上で、医療と介護の連携もさることながら、患者が在宅に戻ったときにも適正な栄養管理ができるように指導内容を家族にもきちんとした形で伝えていくことが欠かせません。シームレスな栄養指導を実現し、食事をいかに食べてもらうのか。こういったところがこれからの栄養士に求められる役割の一つになってくるのだと認識しています。
今後、地域での連携体制が整備されていく中で、病院はもとより介護施設や在宅であっても一定の栄養管理を継続させるということがますます重要になっていくのではないでしょうか。このような連携を質の高いところで機能させるためには、栄養に関する情報を共有するという視点が欠かせません。栄養士の方々は、栄養をつなぐというキーワードをぜひ大切にしていただきながら活躍の場を広げていって欲しいと思います。
第3部では日本製粉株式会社の川口氏から、アマニの基本的な情報や健康食品としてのアマニを特徴付けている栄養成分について紹介していただきました。また、実際の食生活にアマニ商品を活用する際のポイントについてもお話をいただきました。
アマニの摂取量の目安を一つ紹介すると、「日本人の食事摂取基準(2015年版)」では、オメガ3(n-3系)脂肪酸の摂取量として成人1人1日当たり1.6 ~2.4 gが推奨されています。これをアマニに換算するとアマニ油では小さじ1杯、ローストアマニでは大さじ2杯に相当するので、この量を目安にいろいろな料理に加えていただければいいのではないでしょうか。
アマニフォーラムに後援いただいている日本アマニ協会では、安全安心なアマニを提供するために、基準を満たす商品に“優良アマニ商品認定マーク”を使用する許可を与えています。この“認定マーク”があるアマニ商品は、非遺伝子組換え原料の検査や残留農薬の検査に合格した製品であり、なおかつアマニ特有の有効成分が一定量以上含まれていることが認められた商品です。皆様がアマニ商品を比較する際にはこのマークの有無を一つの選択基準として考えていただければ安心してアマニを味わっていただけるのではないでしょうか。
質疑応答では、セミナーの参加者から多数のご質問をいただき、飯島氏、石川氏には時間の許す限りご回答をいただきました。
第4回アマニフォーラムセミナーでは、食と栄養をキーワードに健康長寿のカギとなるフレイル予防に関連した話題についての講演が行われました。2025 年の日本は団塊の世代が75 歳以上の高齢者となり、超高齢化社会を迎えます。健康寿命を延伸するためのさまざまな取り組みが行われている中、健康維持の原点ともいえる「食」の重要性が見直され、関心はますます高まっています。
アマニフォーラムでは4 回のセミナーを通して栄養と健康に関する最先端の情報を発信してまいりました。
セミナーの内容が、生活者の皆さまの健康的な生活に役立てられることを期待しています。