α-リノレン酸が効果をもたらすしくみ

α-リノレン酸が効果をもたらすしくみ

脂質には2種類の油がある

α-リノレン酸は多価不飽和脂肪酸の中のオメガ3脂肪酸に分類されます。オメガ3は人間の体に必要不可欠な必須脂肪酸で、体内で合成することができない栄養素ですので、積極的に摂る必要がある重要な脂成分です。 α-リノレン酸は私たちにさまざまな健康効果をもたらしてくれますが、その効果のしくみについてみていきましょう。

体内でDHA・EPAに変換されるα-リノレン酸
体内でDHA・EPAに変換されるα-リノレン酸

体内でDHA/EPAに変換される

DHA(ドコサヘキサエン酸)・EPA(エイコサペンタエン酸)は、サバやイワシなどの青魚に多く含まれている今話題の栄養素です。日本人があまり魚を食べなくなったこともあり、サプリメントや健康食品などが多く出回っています。

α-リノレン酸は肝臓で吸収された後、EPAに変換され、その後DHAに変換されます。α-リノレン酸からEPAへの変換率は10%前後と言われています。

DHAは主に赤血球や細胞膜を柔らかくする効果があるため、脳内に入り神経細胞膜を柔らかくすることで記憶力や学習能力を向上させる働きがあると言われています。EPAは、血液中の血小板を固まりにくくすることで血管の詰まりを防ぐ抗血栓作用があるといわれており、血液をサラサラにするなどの効果が期待されています。

またDHA、EPAを含むオメガ3脂肪酸について、うつ病を軽減する効果があることが報告されています。

リノール酸の合成を阻害し炎症を抑制する

リノール酸は必須脂肪酸の一つで、オメガ6脂肪酸に分類されます。 このオメガ6脂肪酸は血中コレステロールや中性脂肪を一時的に低下させ、動脈硬化を予防するなどの効果が報告されています。一方、過剰摂取すると炎症を惹起するなどのリスクも考えられますから注意が必要です。

また、α-リノレン酸に代表されるオメガ3脂肪酸はリノール酸などのオメガ6脂肪酸に対し競合的に作用し、炎症を低減する効果が期待されます。

細胞膜を安定化しからだの働きを調節する

人間の体に存在する約60兆個の細胞は、「細胞膜」によって守られています。そのバリア機能により特定物質の進入を防ぎ、内部の環境が一定に保たれ、守られています。この細胞膜を構成している主な成分はリン脂質と呼ばれており、脂肪酸から合成されています。

α-リノレン酸などの脂肪酸が不足すると細胞膜がきちんと構成されなくなるため、代謝が上手く行われず体内調整機能が弱まった結果、様々な疾患の要因になるとも言われています。良質な脂質を十分に摂取することで、細胞膜が安定化し、大事な細胞をしっかり守ることができるといえます。

α-リノレン酸の効果を十分に発揮させるにはリノール酸の摂取を控える

体内に入ったオメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸は同じ酵素(Δ6デサチュラーゼ)を代謝の過程で利用するため、お互いに競合的な代謝阻害を起こすといわれています。このためオメガ3脂肪酸であるα-リノレン酸を摂っても、オメガ6脂肪酸であるリノール酸の摂取量が多いとその効果を十分に得ることができません。またα-リノレン酸の代謝量が減少すると、EPA、DHAに変換される際の変換効率も落ちてしまいます。

アマニ、エゴマなどα-リノレン酸を多く含む食品を摂る時は、大豆油、ゴマ油などオメガ6脂肪酸をできるだけ控える食事内容にしましょう。